ヴィルレ ウルトラスリム

極薄型の腕時計を検討するときに大事なことは何でしょう？求めているのは、手首に世界記録を巻くことでしょうか。それとも上品で洗練された薄型タイムピースでしょうか。少し軽薄な質問だと思われるかもしれませんが、実は奥深い問いです。その答えにより、マーケティングの論点と洗練されたドレスウォッチの違いが明らかになるからです。

この二項対立の根底にあるのは、妥協の度合いです。世界最薄が目標なら、犠牲は避けられません。ダイヤルを取り除いてしまうこともあるでしょう。ダイヤルは時計に厚みを与えるからです。場合によっては、小さくて薄い香箱に変えてパワーリザーブを減らす必要がありますし、振動数を減らすこともあるでしょう。振動数を抑えれば精度は低下しますが、香箱は小型化できます。さらには、ムーブメントの地板をなくし、ケースバックやダイヤルをムーブメントの部品として使用するという方法もあります。但し、確実に薄くなる一方で、強度が犠牲になります。

薄さという命題に対しては、腕時計を身に着けたときの感覚を考えます。1～2 mmほど薄くなったところで、身に着けたときに全く気づきませんが、性能や精度、信頼性の低下ははっきりと認識できます。性能や精度、信頼性が優先順位の上位にあることは明らかです。ブランパンは、新しいヴィルレ ウルトラにおいて優雅なフォルムを極限まで追求しながらも、犠牲を払うことはしません。

品の良さと奥ゆかしさこそが、ヴィルレ ウルトラスリムの価値基準です。ダイヤルはシンプルに時間だけを表示するクラシックスタイルで、時分を示すローマ数字だけがすっきりと並んでいます。ダイヤルのシンプルさを損ねないよう、パワーリザーブ表示は時計の背面に配置。時計を身に着けるとき、または夜になって外すとき、ゼンマイ巻きの状態を示すという目的をさりげなくも完璧に果たします。この2度の機会こそ、パワーリザーブを確認する絶好のタイミングです。