パーペチュアルカレンダーを動かす ブレイン

機械式パーペチュアルカレンダーの精緻な 構造は、まさにマイクロメカニクス技術の賜 物です。特に、原則4年に1度やってくる「閏 (うるう)年」に対応する機械的仕組みの考 案は、時計製造における難題の1つと言える でしょう。その秘密は「プログラム歯車」と呼 ばれる部品にあります。ブランパンのキャリ バー5954.4では、このプログラム歯車が同 軸上に2つ搭載されています。1つ目は1年に 1回転するもので、30日までの月と31日まで の月、および28日までの2月がプログラムさ れており、2つ目は8年に1回転するもので、8 年間に2回訪れる閏年がプログラムされて います。

各月の日数の違いに対応し、正しい表示を実 現するプログラム歯車の仕組みに目を向ける 前に、まずは24時間で1回転する歯車(A)に よって制御される日々の動きから見ていきまし ょう。この24時間歯車は、2つの「ツメ」が付い たレバー(C)と噛み合うカム(B)を備えていま J す。31日までの月には、このツメの1つ(C1) が、31の歯を持つ日付歯車(E)を毎夜1歯ず つ送ります。

一方、30日までの月に対応するのは1年単位 で動くプログラム歯車（D）と2つ目のツメ（C2） です。1年単位のプログラム歯車の外側には、 長いレバー（C）に沿って動くローラー（F）があ り、31日までの月には、そのローラーが押し込 まれることによって、2つ目のツメ（C2）が31歯 の日付歯車（E）と接触しなくなります。一 方、30日までの月には、1年単位のプログラム 歯車（D）にあるくぼみによって2つ目のツメ （C2）が31歯の日付歯車（E）の下にあるカム （G）に接触し、30日から翌月1日に送られま す。28日までの通常の2月には、このくぼみが より深くなっており、28日になると2つ目のツメ （C2）がカム（G）に接触し、28日から翌月1日 に一気に進むようになっています。 さて、ここで気になるのが、先ほど触れた8年 歯車（H）によって制御される2つの閏年です。 どのような仕組みなのでしょうか。この歯車に は2つの突起があり、それぞれが8年のうちに 2回訪れる閏年に対応しています。その突起に よって1番目のツメの位置が変わり、閏年の 1日分を追加できるというわけです。 パーペチュアルカレンダーの中核となる要素 はもう1つあります。日付が1日に変わる時の月 表示の変更です。31歯の日付歯車の上にある カム（I）には細長いツメが付いており、各月の 1日になるとこのツメが（お察しの通り）12歯 の月歯車（J）を動かすことによって切り替わる という仕組みです。

仕組み（開発から製造まで完全自社製）の複雑 さとは裏腹に、各表示はダイヤル上にすっきりと わかりやすく配置され、読みやすさと調和の取 れた美しさを兼ね備えている。

月と年（閏年を含む）の表示

月とうるう年の周期が同じカレンダー上に 表示される。

ムーンフェイズ表示

ブランパンの顔であるムーンフェイズは、クォーツ危機における「機械式時計のルネ サンス」の象徴でもあった。

自動調整される日付表示

パーペチュアルカレンダーの真髄は日 付表示にある。

4つのアンダーラグコレクターの 1つ

特許取得のアンダーラグコレクターに より、指で押すだけでカレンダーの表 示を変更することができる。