新しい カレンダー

腕時計のコンプリケーションのうち、最もよく使われ るものはどれでしょうか。ちょっと考えてみましょう。ま ずはアラーム。大切な機能ではありますが、頻繁に使 うものではありません。普通、私たちが起きなければ ならないのは1日1回ですし、昼寝をしたとしても鳴ら すのは2回程度でしょう。クロノグラフでもないはずで す。きっちり16分という調理時間を守りながら1日中リ ゾットを作り続けている人は別ですが。また、リピー ターでもないでしょう。心地よい音色とはいえ、1日にそ う何度も鳴らすものではありません。GMT機能も違う はず。毎日タイムゾーンをまたいで移動する人はまず いないでしょうから。となると、最も頻繁に使われる コンプリケーションは、日付を表示するカレンダー 機能ではないでしょうか。

日付表示は、腕時計に欠かせない便利な機構です。そ こでブランパンは2017年のバーゼルワールドで、ヴィ ルレ コレクションに新たに仲間入りする3つのタイム ピースを発表しました。表情の異なる3種類のカレンダー 機能を搭載した、ヴィルレ デイ・デイト、ヴィルレ ウィー クリーインジケーター ラージデイト 8デイズ、ヴィルレ デイト ムーンフェイズの3モデル。1つの窓に表示した り、2つの窓に大きく表示したり、特殊な針で指し示し たりと、それぞれの方法で日付を表示します。

表示窓：ヴィルレ コレクションは、時を超えたエレガン スと洗練を感じさせる、ブランパンの最もクラシックな コレクション。新たに仲間入りしたデイ・デイト モデル にも、こうした価値観がしっかりと反映されています。 ダブルステップベゼル、ローマ数字のインデックス、ス リムなケースといったヴィルレを象徴するデザインはそ のままに、3時位置に並んだ控えめな表示窓が新しい 表情を添えています。この曜日や日付の表示は、イン デックスとスモールセコンドの調和を乱すことなく文字 盤のレイアウトに見事に溶け込み、それでいて読み取 りやすいデザインとなっています。深夜0時を迎えた瞬 間に曜日表示が変わり、続いてわずかな時間差で日 付が変わります。美しく仕上げるため、ケース側面にコ レクターは付けず、曜日も日付もリューズで設定や調 整ができるようになっています。

デイ・デイトを動かすムーブメントは、ブランパンの自社 製自動巻キャリバー1160DD。主ゼンマイを収めた香箱 を2つ備えることで、72時間のパワーリザーブを実現し ました。また、キャリバー1160DDには緩急針のないフ リースプラング テンプとシリコン製ヒゲゼンマイが採用さ れています。これはブランパンのすべてのムーブメントに 共通する特徴です。この組み合わせにより、ムーブメント の精度だけでなく耐久性も大幅に向上するのです。透 明なケースバックからは、アングラージュ、ペルラー ジュ、コート・ド・ ジュネーブといったヴィルレ コレクション らしい美しい仕上げを施したムーブメントと、ハニカム パターンのギョーシェ彫りを施したイエローゴールド製 ローターを覗き見ることができます。デイ・デイトのこうし た機構は、直径40mmのステンレススティール製ケース に収められています。

ラージデイト：一方、ヴィルレ ウィークリーインジケー ター ラージデイト 8デイズには、日付表示を筆頭に、まっ たく異なるカレンダー機能が搭載されています。様々な 日付表示のうち、最も優れた視認性を誇るのが、この ラージデイト コンプリケーションです。6時位置に2つの 窓が並んでおり、そこに大きな数字で日付が表示され ます。ラージデイトを搭載したブランパンの他のタイム ピースと同様に、このモデルも、深夜0時になると瞬時に 日付が変わります。

ヴィルレ ウィークリーインジケーター ラージデイト 8デ イズの魅力は、ラージデイト以外にも2つのカレンダー機 能を備えていること。その1つは、モデル名の由来となっ たカレンダーウィーク機構です。年初から何週目にあた るのかをサーペント針で表示します。2世紀にわたる時 計製造の伝統から生まれたサーペント針は、時刻を示 す針と時刻以外の情報を示す針とを区別するために考 案されました。ブランパンがこのモデルにサーペント針 を採用したのも、まさにそのためです。時刻を示す時針、 分針、秒針はレッドゴールド製で、太めの時針と分針に はヴィルレ特有のオープンワークが施されています。一 方、週番号を示すのは、ブルーに彩られた蛇行針。色も 形も違うので、時刻を示す針と見間違うことはあり ません。週番号は文字盤の一番外側に、ローマ数字の インデックスをぐるりと囲むように刻まれています。 目利きの時計通ならすぐにお気づきかと思いますが、こ のモデルの文字盤には週番号が53まで振られていま す。1年は決まって52週であるという認識はよくある間違 いで、タイムピースを手がけていながら勘違いしている メゾンすらあるのですが、実際には53週ある年も多いの です。少し専門的な話になりますが、国際標準化機構 （ISO）が発行した、週番号に関する国際規格（ISO 8601）というものがあります。この規格では、1年の第1週 は、1月の最初の木曜日を含む週で、かつ1月1日に最も 近い週であると定義されています。また、1年の最後の週 とは半分以上の日が12月に含まれ、その最終日が12月 31日に最も近い日曜日の週、とされています。国際規格 のこうした定義に基づいて考えると、現在世界で用いら れているグレゴリオ暦においては、53週ある年は400年 につき71回、およそ5年に1回やってくることが分かりま す。たとえば、2012年、2017年、2023年、2028年、2034年 がそれにあたるのです。

このモデルにはもう1つ、曜日表示も搭載されています。 曜日は、9時位置にあるインダイヤルに表示されます。

ヴィルレ ウィークリーインジケーター ラージデイト 8デ イズには、ブランパンが特許権を持つアンダーラグコレ クターが装備されており、カレンダー表示の調整はすべ てこのコレクターで行います。カレンダー表示は通常、 ケース側面に配された小さなくぼみ状のコレクターで設 定や調整を行いますが、それには小さな工具やピンが 必要となります。しかしブランパンのアンダーラグコレク ターなら、こうした不便さを解消できます。コレクターは ウォッチのラグの下に隠されているため、ケース側面に 余分なくぼみを増やすことなく、すっきりとした美しいデ ザインを実現できるのです。また、使いやすさも向上しま す。ブランパンのコレクターシステムでは、ピンのような 特別な道具を使わなくても、指先で簡単に表示を調整 することができるからです。11時位置のコレクターでは 曜日を、そして1時位置のコレクターではカレンダーの週 番号を調整できます。ラージデイトはリューズで調整し ます。

このモデルには、ブランパンの自社製キャリバー 3738G2が搭載されています。この自動巻ムーブメント は、主ゼンマイを収めた香箱を3つ備えることで、8日間 という驚異的なパワーリザーブを実現。デイ・デイト搭 載のムーブメント同様、緩急針ではなくテン輪のチラネ ジによって慣性モーメントを増減させて精度を調整す るフリースプラング テンプと、シリコン製ヒゲゼンマイを 採用しています。テン輪はチタン製で、現在特許を申請 中です。また、バイカラーのローターにはハニカムパターン のギョーシェ彫りが施されています。

こうしたカレンダー機能を独特の趣で引き立てるのが、 「グラン・フー」と呼ばれる高温焼成エナメルを施した 文字盤です。この文字盤の製作には、多大な労力を要 します。文字盤にエナメルをのせ、そのたびに高温の炉 で焼き上げて層を重ねていきます。とはいえ、こうした労 力はそれに見合う美しさを生み出します。文字盤を彩る 深みと華やかさは、グラン・フー ・エナメルにしか出せな い味わいなのです。

レッドゴールド製の42mmケースに収められたこのタイ ムピースには、レッドゴールドのフォールディングバック ル付きで、ハンドステッチを施したアリゲーターストラッ プがあしらわれています。